「フランス中世の文学」講座

  • 講 師 : 原野 昇
  • 日 時 : 2015年 11月11日 ~ 12月16日 水曜日 13:00-14:30
  • 定 員 : 30 名
  • 金 額 : 全6回 12,000円 ( ご希望の講座だけ受講することもできます。1回 2,500円 )

第1講 ヨーロッパ中世から現代を考える、文献紹介

  1. 「現代」を考えるための「中世」
  2. 「中世は暗黒時代」?
  3. 文学、芸術、遊び、「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人間)」
  4. 祝祭と勤労
  5. キリスト教
  • 古代-中世-近世・近代-現代の歴史の流れのなかで、現代に生きるわたしたちがヨーロッパの中世を学ぶ意味がどこにあるのかを問うことから始める。
  • 文学(ひいては芸術)作品が産み出されること、人がそれを鑑賞することという行いは、人間が生きていくなかでどのように位置づけられるのであろうか。
  • 各地域・各時代に、その社会を特徴づける価値観、倫理観、死生観がある。
    (「パラダイム」、「エートス」)
  • 文学作品にはそれらを含む社会が反映されている。
  • 文学作品を通してヨーロッパの中世をみていく。

第2講 『ロランの歌』- キリスト教世界、聖地、巡礼、十字軍/異教徒

  1. 英雄叙事詩
  2. キリスト教徒/異教徒、悪魔
  3. 聖地、聖人、聖遺物
  4. 聖地巡礼
  5. 十字軍
  • フランス中世文学の代表的作品の一つ『ロランの歌』を取り上げる。
  • スペイン遠征の帰路、後衛の任にあたったシャルルマーニュの臣下ロランが異教徒を相手に勇敢に戦うが、ついに配下の騎士とともに斃れる。シャルルマーニュは引き返し、敵の異教徒をせん滅する。
  • 主要テーマが、異教徒せん滅とキリスト教世界の擁護。
  • 『ロランの歌』を通して、11・12世紀のフランス社会におけるキリスト教の熱狂ぶりを考える。

第3講 『ロランの歌』 ー口承文学、上演、いつ、どこで、誰が鑑賞?

  1. 作品の誕生(創造)から鑑賞(受容)まで
  2. 口誦(上演)ー音読ー黙読
  3. 読書(個人による黙読)は比較的新しい鑑賞形態
  4. 口誦(上演)の実態ーいつ、どこで、誰が?
  5. ジョングルール(大道芸人)
  6. 上演のための作品上のさまざまな工夫
  • 『ロランの歌』はジョングルール(大道芸人)によって歌って聞かされた。
  • 屋外での上演は、天候や日没にも左右される。
  • 聴衆も、途中から加わる者もいるなど浮動的。
  • そこから、上演には即興性など、臨機応変の対応が必要。
  • 作品構成上においても、暗誦・上演を容易にするための種々の工夫がなされている。

第4講 『トリスタンとイズー物語』-愛の賛歌、ケルト世界、媚薬

  1. 愛の賛歌
  2. ケルト世界、驚異(メルヴェイユー)
  3. 宿命(媚薬)
  4. 古譚(伝説)の中世社会への適応(ベルールとトマ)
  5. 岩波文庫版(ベディエ版の邦訳)の特徴と問題点
  • マルク王の妻イズーと、王の甥で臣下でもある騎士トリスタンとの不倫の愛。
  • にもかかわらず二人の愛が讃美されているようにもみえる。
  • ケルトの古譚(伝説)の中世社会への適応
  • キリスト教倫理との関係
  • 2系統-ベルール(俗伝本)とトマ(騎士道本)
  • 岩波文庫版(ベディエ版の邦訳)の特徴と問題点

第5講 物語作家クレチャン・ド・トロワ-宮廷風恋愛、戦士から騎士へ、騎士道

  1. 宮廷詩人クレチャン・ド・トロワ
  2. シャンパーニュの宮廷、文芸庇護者(メセナ)
  3. アーサー王伝説、史実から物語へ、ケルト民族の英雄
  4. 円卓の騎士
  5. 騎士、騎士道、戦士から騎士へ
  6. 宮廷風恋愛、愛の法廷
  • フランス中世最高の物語作家クレチャン・ド・トロワ
  • クレチャン・ド・トロワが活躍したのは、フランス、シャンパーニュの宮廷。そこにはマリ・ド・シャンパーニュという女性の文芸庇護者(メセナ)がいた。
  • クレチャン・ド・トロワはアーサー王宮廷の騎士が女性への愛を求めて冒険に旅立つ物語を書いた。
  • アーサー王とはどんな人物か。歴史のなかからケルト世界の伝説上の英雄となった。
  • 宮廷風恋愛とは。若き騎士が自分より身分が上の既婚の女性へ恋し、彼女の愛を得るために、進んで危険な冒険・試練に立ち向かう、という文学上の類型が成立。

第6講 おわりに、中世物語の魅力

毎回、講義の最後に「今日の講義」を聞いて、(1)最も印象に残ったこと、(2)もっと聞きたかったこと、(3)その他、自由に書いてもらい、それをもとに受講生を中心に、第1~5講のまとめと補足をおこなう予定。

講座の趣旨

人間は想像し、表現することを求める。そのあり様には社会が反映されている。ルネサンス以降の近代は、合理性をよりどころとして、科学・技術の進歩・発展こそ人類の幸福をもたらすものと信じてひた走ってきた。20世紀後半以降、その合理性信仰に疑問符が付けられてきた。このような問題意識をもって、ヨーロッパ・ルネサンス期以前の社会と人間の心のあり様(心性)を、フランス中世の文学を手がかりにみていきたい。

講師紹介

原野 昇(はらの・のぼる)

1943年、兵庫県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程中途退学、文学博士(パリ大学)。広島大学名誉教授、広島大学マスターズ副代表、広島日仏協会副会長。著書:『狐物語』(原野他訳、岩波文庫)、『芸術のトポス』(共著、岩波書店)、『フランス中世文学を学ぶ人のために』(編著、世界思想社)他。

原野昇のホームページ http://home.hiroshima-u.ac.jp/nharano/